大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)66号 判決

一 請求原因一ないし三の事実、すなわち、本願発明についてされた特許出願から本件審決の成立に至る特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決の理由は、いずれも当事者間に争いがない。

二 そこで、本件審決の取消事由の存否につき判断する。

(一) 相違点(1)に対する判断について

いずれも成立に争いのない乙第一号証ないし第五号証によれば、本願発明の属する工作機械の技術分野において、例えば、金属切削工具であるバイトの切刃部(チツプ)と工具柄(シヤンク)、多軸ボール盤の多軸ドリルへツドとスピンドル、あるいは旋盤、フライス盤等の工作機械の台盤と回転盤の各連結技術として、それぞれ着脱自在に取付ける方法と一体に組込んで形成する方法との両者が本願発明の特許出願前より用いられていることが認められ、これらの例からも明らかなとおり、工作機械において、特定の機能を有する部品、部材ないし装置を本体に着脱自在に取付けることも、本体に一体に組込むことも、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとつて従来周知の事項であつたというべきである。そして、そのうち一方を選び、ボール盤において、マグネチツクチヤツクを工作テーブルの凹部に組込むことに想到するのに格別困難があるとも認められない。してみれば、ボール盤において、マグネチツクチヤツクを着脱自在に取付ける第一引用例のものの前示構成に基いて、本願発明のように、マグネチツクチヤツクを工作テーブルに一体に組込む前認定の構成とすることは、本願発明の属する工作機械の技術分野における通常の知識を有する者が、容易にすることができる程度のことにすぎないといえるから、相違点(1)に対する本件審決の判断に誤りはない。

(二) 本願発明の作用効果について

(イ) 成立に争いのない甲第四号証(本願発明の明細書)によれば、本願発明は、導磁性の工作物を工作テーブルに対し電磁的に確実に吸着固定し、作業を正確に、しかも円滑、安全に実施できるという作用効果を奏することが認められるが、一方、成立に争いのない甲第二号証(第一引用例)によれば、第一引用例のものにおいても、導磁性の工作物を工作テーブルに対し正確かつ容易に載置固定し、効率的な操作が可能であり、本願発明と同様の作用効果を奏しうることが認められる。

ところで、原告は、本願発明が、第一引用例のものと異なり、マグネチツクチヤツクを取付けるためのボルトが不要であるから、ボルトの使用により生ずる欠点がない旨主張するけれども、ボルトは、従来から、最も一般的な固着具として多くの機械器具に使用されており、用途に応じて適宜な種類のものを選んだうえ、締付けを確実に行い、慣用の回り止め用座金や戻り止め用ナツトを用いる等の手段を施せば、容易に緩むものではなく、高速回転をする部品の取付けや精密加工をする部品の取付けにもボルトが用いられていることからも明らかなとおり、固着具としてのボルトに対する信頼性が高いことは顕著な事実であり、ボルトの使用の有無によつて、本願発明と第一引用例のものとが、作業の正確性、安全性及び能率において、原告の主張するような特段の差異があるとは認められない。

また、原告は、ボルトを使用する場合、特別にトルクレンチを必要とするという不便がある旨主張するが、トルクレンチは機械や装置のあるところにはきわめて広く用いられる必需工具であり、これと上述の固着具としてのボルト使用の安全確実性とに徴すると、トルクレンチを必要としないことをもつて、本願発明の特段の作用効果であるとするには当らない。

(ロ) 本願発明は、マグネチツクチヤツクを工作テーブルに一体に組込むという構成上、マグネチツクチヤツクを着脱することがなく、第一引用例のものに比べ、その着脱の手数と時間を要しないという点において差異があるとしても、第一引用例のマグネチツクチヤツクは着脱自在であるから、適宜交換、転用することができるのに対し、本願発明は工作テーブルに一体に組込んだマグネチツクチヤツクを他の機械に転用し難いという点においては不利であろう。右は、一長一短ともいうべきものであるのみならず、いずれにしても、マグネチツクチヤツクを工作テーブルに一体に組込むか、あるいは着脱自在にするかという設計上の選択によつて必然的に生ずるものにすぎないから、本願発明において、部品を本体と一体に組込むという前示の周知技術を採択することにより当然予測される範囲のものであつて、これを本願発明の顕著な作用効果ということはできない。

(三) 以上のとおり、原告の主張する取消事由は、いずれも理由がなく、本件審決の判断に誤りはない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

ボール盤本体のドリル孔の周縁に非磁性金属隔管を取付け、その外周部になるように、テーブルに設けた凹設部に導磁率の高い断面U型の鉄心を装填し、鉄心の内環部に巻きつけるごとくコイルを設け、コイルの上面に防水合成樹脂、非磁性金属を積在し、コイルにリード接続して設けた(+)(-)端子をスイツチに接ぎ、交流電源を整流器を介して直流に交換接続して磁力を生起せしめるようにしてなることを特徴とするボール盤における磁力を生起せしめるようにしたテーブル

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